&CRAFT COFFEE スタッフでもあり構成作家でもあるスゲハラアツシがお送りするコーヒーコラム
コーヒーにまつわるお話を豆知識を添えてお送りします。
#02 「コーヒー・ハウス今昔」
このコラムは一人の優雅なコーヒータイムを彩るために書かれていると自覚しているが、コーヒーは人と人とが賑やかに会話をする中で楽しまれていた歴史がある。
私は2023年末から2024年の年始の休みをイギリスで過ごしたが、賑やかにコーヒーを楽しんでいた国こそがイギリスだ。
実はイギリスにとってのコーヒーは、紅茶よりも歴史が深い。
1600年代にロンドンに「コーヒー・ハウス」が開店する。酒は出ないが、「カフェ」というより「パブ」に近い業態だ。
「コーヒー・ハウス」とは
17世紀半ばから18世紀にかけて、イギリスで流行した喫茶店で、社交場の機能も兼ね、大きな社会的役割を果たした。
「コーヒー・ハウス」は女人禁制だった
「コーヒー・ハウス」は多くの男性客の溜まり場となった。わざわざ男性客、と書いたのは、「コーヒー・ハウス」が女人禁制の店だったからだ。
イギリス紳士は、コーヒーやタバコをのみながら客同士で政治談議や世間話をしたりしていた。
「近頃税金が高い」
「国王はもうダメだ」
「もっといい給料が欲しい」
今の我々のような苦悩もあっただろうか。
しかし、コーヒータイムと共に交わされたこうした談義や世間話が、近代市民社会を支える世論を形成する重要な空間となり、イギリス民主主義の基盤となっていったと言われている。
「コーヒー・ハウス女人禁制」で生まれた反対運動
当時、コーヒー・ハウスが女人禁制だったため、ロンドンの主婦たちは「コーヒー・ハウスが夫婦関係に支障をきたす!」と猛反発し、「コーヒー・ハウス反対運動」を行った。
その後、ドイツにもコーヒーが伝わり、そこでもコーヒー・ハウスは女人禁制になり「コーヒー反対運動」が起きた。
コーヒーで “きっかけの瞬間” を
現代の「コーヒー・ハウス」が街中に溢れている喫茶店やカフェだとするならば、中ではどんな会話が繰り広げられているのだろう?
もしかすれば、未来の人類の社会システムの礎になるような、高尚な会話が聞けるのかもしれない。
歴史を変えるようなビジネスの、映画の一場面たりうるような“きっかけの瞬間”の会話が生まれているのかもしれない。