&CRAFT COFFEE スタッフでもあり構成作家でもあるスゲハラアツシがお送りするコーヒーコラム
コーヒーにまつわるお話を豆知識を添えてお送りします。
#04 「“本日の豆は○○です”を聞き流さない方法〜ブラジル・コロンビア・エチオピア編〜」
蒲田駅前にある「銀座 和蘭豆」という喫茶店でコーヒーを飲んでいます。
蒲田で老舗の喫茶店として人気を集めるお店は、ひと時の安らぎを求めるサラリーマンと、愚痴の吐き出し場所を求める中高年女性と、ニコチンをしばきたいパチンカスでいつも賑わっています。
とにかくアイスコーヒーが美味しいんです。
HPには「創業50年以来、こだわり続けたモカベースのオリジナルアイスコーヒー」とありますが、スッキリ飲みやすいのにコクがある。クラシックな店内に美味しいコーヒー、素晴らしい接客、そして蒲田民の猥雑さがいいアクセントになっているとても楽しい喫茶店です。
ぜひ行ってみてください。
こういうちゃんとした喫茶店に来ると、どこどこの豆を使用したコーヒーだとか、本日はどこどこの豆でドリップしています、などを教えてくれます。
しかし、その説明を受け取る私が、どこどこの豆だからどうなんだという情報処理ができていないのです。これはコーヒーコラムを書いている人間として許されざる事態です。
そこで今回は私の学びも兼ねて、主だったコーヒー豆の産地と、その特徴をお勉強したいと思います。今回は南米3カ国をお題にしましょう。
「本日のコーヒーは、ブラジルの豆を使用しております」
ブラジルは、世界で最もコーヒーを生産している国で、世界の生産量の約3分の1を占める文字通りのコーヒー大国です。長い生産の歴史があり、大きな農園が大量のコーヒー豆を管理しています。
大量に作られている、ということは価格は比較的安価です。
販売対象が世界全体であるため、味も平均的なものが多いです。風味にはバランスがあり、コクが強すぎず、重すぎない味が特徴です。
「ブラジルの豆を使用しております」と言われたら、ああ比較的飲みやすいクセのないコーヒーが来るのね。と理解しましょう。
「本日のコーヒーは、コロンビアの豆を使用しております」
ブラジルのコーヒーに対して、コロンビアでは小農家が中心となって栽培を行っています。
栽培されている豆の中心はアラビカ種です。これは栽培方法が難しく、細かい手入れが必要で、育つのにも時間がかかります。つまりめんどくさい豆です。ちなみに質の高いコーヒーのほとんどがこのアラビカ種を使用しています。
アラビカ種、というワードを聞いたら、「ああ、めんどくさい豆のコーヒーね」と思いましょう。
味わいは、丁寧に育てられている分、苦味がある風味が特徴で、コクがしっかりしたコーヒーとなります。めんどくささがそのまま苦味になってしまっていると理解しましょう。生産者さんたちの汗が苦味になっているのです(これは私の考察です)。
苦味を味わうために、ドリップコーヒーなどでしっかりと味を出して楽しむのに適しています。
「コロンビアの豆」と言われたら、ああストロングなコーヒーが来るのね…今日は頑張らないといけないし、ガツっといっちゃおうか!と思いましょう。
企業戦士たちにおすすめです。
「本日のコーヒーは、エチオピアの豆を使用しております」
エチオピアはコーヒーの原産地で、自生した固有の品種が多く存在しています。その種類は約3,500種類とされています。人口の約20%がコーヒー産業に関わっており、ブラジルとはまた違うコーヒー大国と言えます。
エチオピアでは、標高2,000mの場所で栽培されるアラビカ種の1種であるゲイシャ種が有名で、高級豆として取り扱われています。
標高2000mという高地で、念入りな手入れが必要なゲイシャ種を栽培するのはとても難しく、その風味と希少性から高級豆として扱われています。
味わいはというと、ベリー系統の甘みと渋みの中間のような風味が感じられ、香りも高いのが特徴です。エチオピアのジャングルを思い浮かべながら、標高2000mで栽培された豆のコーヒーだと想像してください。ベリー系統の甘味という言葉がしっくりくるはずです。
「エチオピアの豆」と言われたら、ああスッキリ甘い感じのストレートなコーヒーか。今日は優雅に過ごしたいし、ちょっと南米のジャングルにトリップしちゃおうかな…と思いましょう。
今回はこの辺で。地球の裏側から遥々やってきた豆が原料になっている飲み物を、1000円足らずで飲めるなんて、つくづく先人たちは偉大ですね。
近くの席では蒲田のサラリーマンがコロンビアのドリップを飲んでいます。
先輩、僕も頑張ります!